The catcher in the workshop
こんにちは。JUNKIです。
昨日はオフだったので珍しく映画を見に行きました。
ひとりで泣きました。自分の生まれ育った国の歴史はちゃんと勉強しなきゃいけないなと感じました。
その後は独り言を呟きながら恵方巻きを食べました。そんな休日でした。
さて、前回からだいぶ趣旨がズレだしました
"The catcher in the workshop"
今回も引き続き希代のトラックレーサー"グレアム・オブリー"についてのお話です。
もともとセミアマチュアだったオブリーは、アワーレコードという名誉ある記録に挑戦することを決意し、それ用のマシンの開発に乗り出します。
そして試行錯誤し完成させたのが、後にモゼール以来9年もの間破られる事のなかったアワーレコードを更新する希代の名車
"オールド・フェイスフル"なのです。
現代では冗談かと思うくらい、非常にユニークなフォルムをしています。
フレームの前側にはチューブが一本だけあり、通常のホリゾンタルフレームでは水平にあるはずのチェーンステイが斜め45度の角度上方から後輪とつながっています。またハンドルの位置は通常より非常に近く、一見すると操縦しづらい奇妙な形状です。
乗ったときのポジションもこんな具合に奇妙な形です。
しかし、全てが空気抵抗を軽減する工夫のために考案されたものであり、例えばトップチューブとダウンチューブを兼ねた一本だけのフレーム前面と独特のチェーンステイ、シートステイを持つフレーム形状により極端に狭いBB幅でもフレームにより両足のペダリングが妨げられません。
また通常より極端に近いハンドル位置は両腕を曲げてハンドルの上に上体の全荷重をかけて伏せるような姿勢を可能にしました。これが所謂タックポジション(オブリーポジションMk-1)と呼ばれる独特のフォームです。自転車で高速走行をする上で最大の障壁は空気抵抗であり、このタック・ポジションは空気抵抗の軽減に非常に効果がありました。
この自転車に使われた材料も非常にユニークで、独特な形状のフレームとハンドルは子供用の自転車をもとに自宅のガレージで溶接を施して作られ、ベアリングには廃材で棄てられていた洗濯機の部品まで使われていたそうです。
しかし、記録更新から一週間もたたないうちに、クリス・ボードマンにアワーレコードを破られるてしまいます。加えて記録に再度挑戦しようとした所、唐突にUCIがルール変更、なんと彼が考案する特殊なライディング・フォームを禁止したのです!
しかも、これは明文化されなかったために、オブリーは世界選手権出走僅か1時間前にこの事実を知らされることになりました。これはプロでもない選手に、しかも廃品利用の自転車で自転車界の英雄の記録を塗り替えられ、顔に泥を塗られた形となったプロ自転車界を統括する当時のUCI会長の一存による報復だったと言われています。実際に落車もあり、安全性の為のルールだったとも伝えられていますが。。
また同年彼の兄弟が死去、彼は躁鬱に苦しむ事になります。。
可哀想なオブリー。。
でもオブリーは挫けません。
このような四面楚歌の状態を克服し、肘が胴についてはいけないというルール変更を考慮し新たなフォームを生み出します。
スーパーマンポジション(オブリーポジションMk-2)!!
そして、再びにアワーレコード(52.713 km)を奪取するのです!
ここら辺がこの人のグッとくるポイントなんですね。幾多の逆境を我慢強い努力とユニークな閃きで克服していく様!僕はかっこいいと思いますね。
ただ、更新から半年も経たないうちに、またしても記録を破られてしまうのです。その後、UCIがアワーレコードを『伝統的な(すなわち空力効率のために特化したエアロ形状になっていない)』形状のトラックレーサーで行うこととし、エディ・メルクスの記録(49.43195 km)をベースとすることになってしまったので、オブリーの記録は公式記録としては抹消されてしまいます。ふむ。そんな持ってない感じも哀愁が漂ってていいじゃないですか。
今日の「UCIレースではダイヤモンドフレームしか使用できない」という基本ルールとなった事を考えれば、オブリーが及ぼした影響はむちゃくちゃ大きいのです。
資金のないセミアマチュアの自転車選手である彼が、革新的な発想とそれを具現化させる努力をもって、アワーレコードの更新記録を樹立したという業績。伝統を尊ぶUCIが課す度重なるルール変更にもめげず、自転車の技術的可能性を追求した姿には、ファンだけでなく他の自転車競技選手からも賞賛されています。
オブリー物語、如何でしたか?
その後も彼は記録更新を狙って色々な挑戦を続けたのですが、これ以上熱く語ったところで女子に引かれるのも嫌なので、今回はこのくらいにしておきましょう。笑
ではまた。
JUNKI