陳腐化した多様性 - Neo-Vintage Bike Build

「多様性」という言葉が、少し軽く聞こえるようになった。
けれど、ピストバイクを一台一台組んでいくたびに思う。
本当に“違い”を面白がってる人はどれくらいいるんだろうか。
ピストバイクのカルチャーも「スタイル」だとか曖昧な要素が重視される傾向にあります。
しかしそれは誰かの正解じゃなくて、自分の感覚で走るライダーにこそ相応しい。
だから誰よりも速く走れなくたってカッコいいし、それに憧れたものです。
最初はただの模倣でもいい。
自分の身体で感じ取ったもので少しずつアップデートしていくことが本当の多様性なのではないのか。
そんなことを考えながら組んだカスタムバイクのご紹介です。
選んだフレームはこないだ入荷したNJSフレームのうちの1つの片倉シルク。
競輪の創成期から活躍していた老舗ブランドです。
片倉といえば二枚肩のフォークとラグレスのフレームですが、こちらは芸術性の高いラグとシンプルな丸フォーク。
あえて"片倉感"のないこのフレームは侘び寂びを感じさせる超がつくマニアックなチョイスになるのだと思います。
フレーム:Katakura Silk Vintage NJS Frame set
この全くもって合理的ではないセッティングこそが、ピストバイクを代表するスタイルの1つと言えます。
角度のついたステムを打ち消すようなアップライズなハンドル。
空気抵抗なんて気にしないのにバトンホイールは絶対使いたい。
気持ちサイズ小さめでサドルをカチ上げて高重心な姿勢で乗りこなすのが1種のドレスコードのようなものでした。
フロントホイールには新進気鋭のSTIFFI。
この3スポークは日本の短剣をイメージしているそうですが、今はなきZIPP3000をソリッドにさせたようなデザインでちょっとエモい。
一見なんともないリアホイールにもこだわりが詰まっています。
リムはF-RIMのブロ横別注のF25。ローハイトなカーボンリムはなかなかないので重宝します。
ヴィンテージのARAYAのカーボンホイールをオマージュしてみました。
ちなみにこちらのような通常ラインナップにないカーボンリムをご注文いただける受注会が開催中です。
6月1日までオーダー可能ですので気になる方はお気軽にご相談ください。
そしてハブは耐久性No.1のPhilwoodを使いたいのですがここで1つ問題が。
実は古い競輪フレームはリアエンドの幅が狭い規格のものがあります。
現行の120mm幅のハブは基本的に使えないので、フレームと同じように当時もののホイールを使うことが多いです。
意外と知らない人も多いのですが、Philwoodは110mmエンドに変換するコンバージョンキットを販売しています。
これで現代の最高スペックのハブをヴィンテージのフレームに使うことができます。
あくまでBROTURESが販売しているピストバイクは街乗りを目的としています。
それにはある程度の乗りやすさを担保する必要があります。
特にサドルはスポーツバイクの大きな悩みの種であるお尻の痛みに直結します。
ヴィンテージバイクの外観を損なうことなく、お尻をサポートしてくれるものをチョイスしました。
スウェード調で非常に質感の高いサドルです。
尻上がりでシャープなシルエットに適度なパッドで乗りやすく、高級感のある上品なアクセントに。
こんなヴィンテージのフレームを定番なフォーマットで組んでもピストは個性が出る。
テンプレートが存在しないからこそライダーの好みがどうしても滲み出てしまうものです。
多様性なんて誰かに強要されるものではないはず。
ピストカルチャーは様々なルーツやスタイルを持った強烈な個性の集合体です。
自分のセンスが唯一無二であることを確信してピストに乗ることが多様性なのだと思います。
僕たちはその最後のひと押しをお手伝いする存在です。
初心者とか関係ありません。
興味のある方は是非ともご相談くださいね。
Toshi

BROTURES YOKOHAMA
Toshi