A-FRAME Titanium Track|90年代の名車を現代へ
クラシックなデザインに現代のクッション技術を取り入れたスニーカーや、ミッドセンチュリー家具の造形を現代の素材と製法で再構築したインテリア。
古いもののディテールやデザインを受け継ぎながら、最新の技術によって新たな価値を生み出す。
こうしたアプローチは、ファッションやインテリアなど、さまざまな分野で見られます。
まさに「温故知新」と呼ぶにふさわしい考え方です。
では、ピストバイクの世界ではどうでしょうか。
日本でピストバイクが一大ブームを迎えた2007年頃よりも、さらに昔。
1990年代のトラックバイクが持つ独特の造形を、現代の素材と技術で作り直したら、どんな一台が生まれるのか。
そんな少年のように無邪気な疑問を、そのまま形にしたようなフレームがあります。
それが、A-FRAME Titanium Trackです。

今回はこのフレームを、速さを追求する攻略スタイル「RACE & SPEED」をテーマに組み上げました。

90年代の名車への憧れから生まれた、A-FRAME Titanium Track。
「NEO RETRO」をコンセプトに掲げる、アメリカ・サンフランシスコ発のブランド「A-FRAME」。
1990年代から2000年代初頭のトラックバイクカルチャーに強い影響を受け、その時代を象徴する名車の魅力を、現代の素材と技術によって再解釈しています。
ブランドを象徴するモデル「Titanium Track」の着想源となったのは、1993年のCannondale Track。

A-FRAMEでは、大口径チューブが生み出す力強いシルエットや、コンパクトなリア三角といった特徴を受け継ぎながら、フレーム素材には3AL-2.5Vチタンを採用しています。
これは、チタンを主成分に、アルミニウムを約3%、バナジウムを約2.5%添加した合金です。
チタンが自転車のフレーム素材として高く評価される理由は、軽量性と強度のバランス、優れた耐腐食性、繰り返しの負荷に対する耐久性、そして独特のしなやかさにあります。
まず注目したいのが、その耐腐食性です。

チタンは表面に保護性の高い酸化皮膜を形成するため、雨や汗、湿気などによる腐食に非常に強い素材です。クロモリのように錆の進行を防ぐための塗装を必要とせず、金属そのものの質感を活かした状態で長く使い続けられます。
アルミやクロモリ、カーボンといった他のフレーム素材と比較しても、長期使用における耐腐食性と素材の安定性は、チタンの大きな強みです。
また、重量に対して高い強度を持つことも特徴の一つ。

必要な強度を確保しながらチューブの肉厚を抑えられるため、軽量性と剛性の両立を目指したフレーム設計に適しています。
さらに、チタンは繰り返しの負荷に対して優れた疲労特性を備えています。
自転車のフレームには、ペダリングや路面からの衝撃によって繰り返し荷重が加わります。こうした負荷が長期間蓄積すると、材料に疲労亀裂が発生する場合があります。
チタン合金は、適切な条件で設計・加工された場合、こうした繰り返しの負荷に対して優れた耐久性を発揮します。

そして、走行性能を考えるうえで欠かせないのが、チタン特有の弾性です。
チタンはクロモリと比較して弾性率が低く、同じ形状であれば力を受けた際にしなりやすい性質を持っています。
実際の乗り味はチューブの径や肉厚、フレーム全体の設計によって変化しますが、こうした素材特性を活かすことで、剛性としなやかさのバランスを追求できます。
A-FRAMEでは、このチタンを大口径のダブルバテッドチューブに加工。強度が必要な部分には厚みを残し、それ以外の部分では肉厚を抑えることで、軽量性と剛性の両立を目指しています。
さらに、タイトなリア三角と軽量なフルカーボンフォークを組み合わせ、踏み込んだ際の鋭い反応性と、軽快なハンドリングを追求した設計です。
そして、チタンフレームの魅力は走行性能だけではありません。
優れた耐腐食性と、素材そのものの質感を活かせることは、長く所有する楽しさにもつながります。

A-FRAME Titanium Trackでは、フレーム前方に金属特有の光沢を放つポリッシュ仕上げ、後方には落ち着いた質感のサンドブラスト仕上げを採用。
チタンという金属そのものの表情をデザインとして取り入れ、塗装によるカラーリングとは全く異なる表情に仕上げています。
90年代のトラックバイクを思わせる力強いシルエットを、現代のチタン素材によって再構築する。
その造形には、過去の名車への敬意だけでなく、走行性能と長期所有を見据えた合理性が込められているのです。
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RACE & SPEED|速さを追求し、走りを研ぎ澄ます。
吉祥寺店では、ピストバイクの楽しみ方を3つの攻略スタイルに分けて紹介しています。
今回は、その中でも最も「速さ」に特化した「RACE & SPEED」をテーマにカスタムを施しました。
また、A-FRAMEと同じく、アメリカにルーツを持つパーツブランドを中心に構成している点も、今回のカスタムの大きなポイントです。
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FSA GOSSAMER COMPACT HANDLEBAR
コックピットには、FSA(Full Speed Ahead)のGOSSAMER COMPACT HANDLEBARを採用しました。
ダブルバテッド加工を施したAL6066アルミニウム製のドロップハンドルで、軽量性と剛性のバランスを追求したモデルです。
特徴は、コンパクトに設計されたドロップ形状。
リーチ80mm、ドロップ125mmという寸法によって、ブラケット付近から下ハンドルへの持ち替えがしやすく、走行状況に応じたポジションの変更に対応します。
下ハンドルを握ることで上体を低く構え、空気抵抗を抑えた姿勢を取りやすくなることも、RACE & SPEEDにおける重要なポイントです。
また、ハンドル上部には手を置きやすいフラットな形状を採用。
スピードを追求する場面だけでなく、巡航時の快適性にも配慮されています。
実際に、このフラットな部分の使いやすさを評価するユーザーも多く、日常的なライドでも重宝する設計です。
バーテープには、日本ブランドIOMICのiB-1を組み合わせています。
独自のエラストマー素材「IOMAX」による高いグリップ力が特徴で、汗や雨によって手が濡れた状態でも滑りにくく、耐久性にも優れています。
今回採用した2.0mm厚のモデルは、過度に厚みを持たせず、ハンドルの握り心地をダイレクトに感じやすい仕様。細かなハンドル操作が求められる場面でも、安定したグリップを支えます。
僕自身もここ数ヶ月ほど愛用していますが、手のひらにビタッと吸い付くような感覚がとても気に入っています。
冬場はともかく、汗をかく季節には特にその良さを実感できるはず。日頃から長距離を走る方や、手のひらに汗をかきやすい方にはおすすめです。
今回はアメリカンブランドを中心にパーツを選んでいたのですが、このバーテープの良さを共有したさすぎて、ここに関しては日本製を使ってしまいました。
ステムには、アメリカの高精度パーツブランドTHOMSONから、ELITE X4を採用。
7000系アルミニウムをCNC加工によって精密に仕上げた、優れた剛性と耐久性を持つステムです。
無駄を削ぎ落とした機能的な造形もTHOMSONならでは。
本来はMTBなどのハードなライディングを想定して開発されたモデルですが、その高い固定力と堅牢な構造は、ピストバイクのカスタムでも大きな魅力です。

THOMSON ELITE SEATPOST STRAIGHT
シートポストにもTHOMSONを採用し、コックピットを統一感のある構成にまとめています。
ELITE SEATPOSTは、内部の肉厚を最適化することで、必要な強度を確保しながら余分な重量を抑えています。
今回採用したのは、セットバックのないストレートタイプ。
固定ギアのピストバイクでは、加速時にペダルを踏み込むだけでなく、減速時にはクランクの回転に抵抗を加えるなど、脚を使った積極的な操作が求められます。
特にスキッド時には、上体を前方へ移動させて後輪の荷重を抜くなど、走行中の前後の体重移動も重要です。
ストレートシートポストは、サドルを前方に配置しやすいことが特徴。
前乗りのポジションを作ることで、ドロップハンドルを握った際にも股関節の動きを確保しやすく、積極的なペダリングに対応する乗車姿勢を追求できます。

サドルには、WTBのGRAVELIERをチョイス。
全長246mmのコンパクトな形状に加え、中央には圧迫を軽減するための大きなカットアウトを配置。
深い前傾姿勢を取った際にも、身体への負担を抑えながら安定したポジションを維持しやすい設計です。
今回のようにドロップハンドルを採用した車体では、上体を低く構えた状態でペダリングする場面も想定されます。
その際、サドル前方に荷重をかけやすい形状や、適度なしなりを持つベース構造が、快適なペダリングを支えてくれます。

SRAM OMNIUM|ピストバイク史に残る名作クランク。
クランクには、すでに廃盤となっているSRAM OMNIUMを採用。
OMNIUMは、ピストバイクカルチャーにおいて高い知名度を誇るダイレクトクランク。
高い剛性と耐久性を備え、ストリートライダーからトリックライダーまで、幅広い層に支持されてきました。
特徴的なのは、SRAM独自のGXP規格を採用したクランク構造。
剛性の高いクランクアームと一体型スピンドルによって、ペダリング時の力をしっかりと受け止める設計です。
また、BROTURESオリジナルのダイレクトクランク「BEAT」の開発においても、特に耐久性の面で大きく参考にされた存在です。
すでに廃盤となった現在でも根強い人気を誇り、中古市場でも注目され続けています。
※今回使用したOMNIUMも中古で入荷したものでしたが、ブログ公開前に店頭で完売となりました。

USED / EASTON R90 SL × PHILWOOD HIGH FLANGE TRACK HUB
前後ホイールには、EASTON R90 SL リムとPHILWOOD HIGH FLANGE TRACK HUBを組み合わせた、USEDの手組みホイールを選んでみました。

EASTON R90 SL DISC
リムには、EASTONのハイエンドアルミリム「R90 SL (DISC)」を使用。
このリムは本来ディスクブレーキ車専用リムのため、リムブレーキは使用できません。
固定ギアで、ブレーキを意図的に「使わない」ライダー向けのアッセンブルとなります。
27mmのリムハイトと、内幅19.5mmのワイドな設計を持ち、軽快な加速感と安定した操作性を重視した構成。
スプリントやコーナーからの立ち上がりなど、速度変化の多い場面でも扱いやすいホイールを目指しています。
また、ワイドなリム幅は、現代的なロードタイヤとの組み合わせにも好相性です。

PHILWOOD HIGH FLANGE TRACK HUB
ハブには、アメリカ・カリフォルニア州サンノゼの老舗ブランドPHILWOODを採用。
高精度なベアリングと堅牢なハブシェルによって、長期間にわたり安定した回転性能を維持できるよう設計されています。
軽量性と剛性を追求したEASTONのリムに、耐久性と精度に定評のあるPHILWOODのハブ。

それぞれのブランドが培ってきた技術と設計思想を、一つのホイールに落とし込んだ贅沢な組み合わせです。
走行性能はもちろん、アメリカンブランドならではのタフネスと品質の高さを兼ね備えた、今回のA-FRAME Titanium Trackにふさわしいハイエンドなホイールです。
PIRELLI|フロントとリアで役割を分けたタイヤ選び。
ピストバイクでは、フロントとリアで異なるタイヤを組み合わせることがあります。
例えば、BROTURESで定番となっているのが、フロントにCONTINENTAL GRAND PRIX 5000、リアにGATORSKINを組み合わせるセッティング。
フロントには軽量性や転がりの軽さ、リアにはスキッドによる摩耗に耐える耐久性を求めることで、それぞれの役割に適した性能を最大限に発揮させます。
今回のA-FRAME Titanium Trackでも、このバランスを踏襲しながら、前後ともにPIRELLIのタイヤを選びました。
FRONT|PIRELLI P ZERO RACE RS
1872年にイタリア・ミラノで創業したPIRELLIは、150年以上の歴史を持つ世界的なタイヤメーカーです。
F1をはじめとするモータースポーツで培った技術を背景に、自転車用タイヤでも高い走行性能を追求しています。
中でも「P ZERO RACE RS」は、レースでの使用を想定して開発されたハイパフォーマンスモデル。
タイヤの接地面には、PIRELLI独自のゴム素材「SmartEVO2コンパウンド」を採用。路面との摩擦をコントロールすることで、転がり抵抗の低減と高いグリップ性能の両立を追求しています。

REAR|PIRELLI CINTURATO ROAD
リアには、耐久性と耐パンク性能に優れた「CINTURATO ROAD」を採用。
タイヤの接地面には、耐久性とグリップ性能を両立する独自のゴム素材「SmartNET Silicaコンパウンド」を採用。
さらに、タイヤ内部を補強する「TechWALL+ ROAD構造」によって、異物の貫通や路面からのダメージに対する保護性能を高めています。
固定ギアのピストバイクでは、ペダリングによる減速やスキッドなどによって、リアタイヤに大きな負荷がかかるため、リアには摩耗やパンクに対する耐久性を重視したタイヤを選択しました。
BROTURESで培ってきた前後異種タイヤのセッティングを、PIRELLIのラインナップで再現した組み合わせ。ぜひお試しください。
NEO RETROを、走行性能で表現する。
今回のA-FRAME Titanium Trackは、RACE & SPEEDを軸に、走行性能と耐久性の両立を追求した一台。
ドロップハンドルによる前傾姿勢、ダイレクトな駆動感を持つクランク、軽量性と剛性を追求した手組みホイール。
速さを追求する一方で、THOMSONやPHILWOODの信頼性、リアタイヤの耐久性など、長く乗り続けるための性能も大切にしています。
1990年代のトラックバイクが持つ造形を、現代の素材と技術で再解釈する「NEO RETRO」。
その思想を受け継ぎながら、現代のストリートで走りを研ぎ澄ますためのカスタムに仕上げました。
古いだけでは満足できない。新しいだけでは物足りない。
そんな感性に、きっと響く一台だと思います。
現在、BROTURES吉祥寺店では、A-FRAME Titanium Trackは最後の1本となりました。
もちろん、今回とは異なる攻略スタイルでのカスタムも可能ですので、ぜひ店頭で実車をご覧ください。
BROTURES KICHIJOJI
Miya


