不便であることの豊かさ。

侘び寂びを感じるフレームが入荷しました。
福岡のフレームビルダー原田製作所のNJS認定フレームの*SAMSON*。
極限に無駄を削ぎ落としたヴィンテージピストバイクです。
SAMSON Vintage NJS Frame set(Blue / C-T545mm)
NJSフレームは全て熟練した職人の手によって、競輪選手一人ひとりの体格に合わせて丁寧に仕上げられています。
なので素材、デザイン、サイズなど本当にバラバラ。
理想の1本にはなかなか出会えないけど、そのディグってる過程の楽しさも魅力の1つだと思います。
今回のフレームは1インチのパイプに丸フォークで超がつくトラディショナルなスペックながら、シートポスト径27.2mmとリアエンド120mmで現行品のパーツとの互換性の高い規格です。
少し珍しい大きめなフレームなので170後半の方にちょうど良いかと。
基本的に市場に出回るフレームは競輪選手のお下がりで、ヴィンテージであるほど細心の注意を払って徹底的な検品を行う必要があります。
中古フレームには隠れた問題が潜んでいる可能性があるため、一つ一つ丁寧にチェックして最高の状態でお届けします。
このフレームをそのまま競輪パーツだけで組んでも良いかもしれないけど、BROTURESではストリートの要素も欠かせない。
今回のビルドのコンセプトは「ストリートケイリンスタイル」です。
SAMSON Vintage NJS Frame set(Blue / C-T545mm)
競輪場でコンマ1秒を争うための自転車をストリートで走らせるにはいささか不便すぎるでしょうか。
しかしプロレーサーの実戦を支えてきた確かな品質のパーツであれば、ストリートで純粋な速さを求めるライダーの要求にも確実に応えられるはずです。
そこで今回は、本格的な競輪の美学とストリートのエッセンスを絶妙に融合させたカスタムを組んでみました。
競輪ではドロップハンドルしか使用されません。
ストリートの目まぐるしく変化するシチュエーションに対応するために僕らはブルホーンを選択しました。
ピスト乗りのバイブルとも言える映画「プレミアムラッシュ」の主人公のワイリーがクロモリフレームにブルホーンを使っていたことに大きく影響を受けていると思います。
より日本らしく、セクシーな曲線が美しいハンドルにダイレクトな操作感を残すためにコットンバーテープを使用しています。
アクセントのバーエンドはもちろんNITTOのEC-01です。
競輪で実際に使用されるサドルは非常に硬いものが多く、街乗りには不向きです。
このヴィンテージフレームともマッチしてパッドも十分にあるSelle ITALIAのFLITEはNJS二艇も受けているのでこれ以上ないチョイスだと思います。
そしてやはり足回りはSHIMANOで統一するべきでしょうか。
クランクはSUGINOかDURA-ACEか好みが分かれるところですが僕はSHIMANO派です。
オクタリンクBBと中空構造のクランクは軽量ながら3ピースとは思えないほどの剛性を感じることができます。
何よりもこのヌルとしたイナたいデザインがなんとも好きなのです。
そしてハブとブランドを揃えることができるという点でも選びやすいと思います。
SHIMANO DURA-ACE TRACK HUB HB-7600
カップアンドコーン構造のハブはメンテナンスフリーという訳にはいきませんが驚くべき回転性能を誇ります。
適切なセッティングがされたDURA-ACEのハブほど気持ちが良いものはありません。
競輪で使用されるホイールはチューブラですが、スキッドなどを多用するタイヤの消耗が早いライダーとの相性は良いとは言えません。
タイヤ交換が容易なクリンチャーで、かつクラシックなデザインを損なわないリムといえばH+SONのTB-14が最適でしょう。
僕はピストバイクは不便な乗り物だと思っています。
決して便利な自転車ではありません。
そこに侘び寂びを感じるのです。
不完全な美しさ。極限まで機能を削ぎ落とした先に見えるもの。
モノも情報も全てが溢れかえるのこの時代に何を選択するのか。
バイクをゼロから組み立てることはその人の人生観を語るに等しい行為だと思っています。
だからあの頃のピストは1つとして同じバイクはなかったし面白かった。
こんなに不便で豊かな自転車はピストバイク以外にあり得ません。
ご興味がありましたらお気軽にご相談くださいね。

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