作業場からの独り言 その5
「地球上で最も効率的な動物はコンドルで、最も非効率な動物は人間。
だが、人間が自転車に乗れば最も効率的な動物になる」
(映画「スティーブ・ジョブス」より)
リンゴマークでおなじみの彼がコンピュータを指して言った
「Bicycle for the Mind(知性の自転車)」
移動効率の悪い動物である人間は、自転車に乗ることで最も効率の良い動物になることから
人間にとってのコンピュータは、知性を拡げるための自転車であると言い表した一言。
そんな、自転車について今日も語っていきたいと思います。
本日のお題は「ハブ」
自転車以外の乗り物でも使われ、部品としての以外の意味でも使うこの単語。
ネットワークのハブだったり、交通路線や航路のハブといった使い方。
物事の集中する、要衝、中心、基点といった大事な部分を指しますね。
ピストでは数少ない回転部分、ホイールの回転担当の大事なパーツです。
種類をざっくり分けると、
フランジタイプが「ラージフランジ/スモールフランジ」
ベアリングタイプが「シールドベアリング/ボールベアリング」
これを組み合わせた4種類になるでしょうか。
この4種類の特徴を見ていきます。
「ラージフランジ」
現在のトラック用主流。ホイール剛性が高くなる反面、フランジが大きい分重量がある。
重さよりも、回転剛性、横剛性といった強度に重きをおく競輪用NJS規格も採用。
「スモールフランジ」
昔のトラック用主流。ホイール剛性が低くなるが、ハブが小さい分軽くすることができる。
スポークやリムなど、他の部分で剛性を稼げるロードではフロント用で多く出回っている。
「シールドベアリング」
ベアリングがユニットとして”シール”されており、ゴミや異物などが混入しづらい現在の主流。
耐久性が高い。自転車用ではなく、工業用ベアリングを流用していることが多く、
何かあってもユニット交換で済むので汎用性の高い部品。
「ボールベアリング」
ベアリングの基本。シールドではないので定期的なメンテナンスが必要。
調整は「ガタがなくゴリがない」状態に持っていけるので自転車においては回転精度が高い。
カンパニョーロ社とシマノ社はボールベアリングに強いこだわりを持っている。
こんな感じですかね。
ハブの相反する二極性は回転性と耐久性だと思います。
よく回るハブは短命ですし、
回転性を犠牲にすれば一生モノのハブもできちゃうかもしれません。
はい、実はあるんです、一生モノ。
ご存知の方も多いと思います「Philwood」
「私たちのハブは一生使ってもらえる強度を確保している」と先日来日していた副社長が言ってました。
スタンダードハブは、まさに回転性を犠牲にして耐久性を求めたモデル。
ベアリングは「NSK(日本精工)」に別注している自転車用に調整されたオリジナル。
そこに隙間なく、自社のグリスをパッツンパッツンに詰め込んじゃうので回るモノも回らなくなります。
よく「Philwoodのハブは育てる系」と言われるのは
グリス馴染みや、ベアリングの当たりが出るからだと言われています。
もう一点、一生モノと言われる理由は
ベアリング交換の耐久性の高さもあるからだと言っておりました。
ハブ本体は正直、何度も何度も圧入に耐えられるようにはできていません。普通は。
そんなところの耐久性にこだわるとハブが重くなるし、
そんなにベアリング交換するくらいなら丸ごと買い換えてよと。普通は。
普通を覆します、Philwoodですから。
高価なハブを手に入れたからには、一生安心して満足してもらえる部品でありたい。
そんな願いが込められていて、ベアリング交換何度でも耐えちゃいます。
(もちろん「正しく」脱着された場合に限ります)
回転性を求める方には「カーボナイトベアリング」という選択肢も
Philwoodは用意してくれています。至れり尽くせりですね。
ですが、回転性の高いハブの答えとしてPhilwoodではちょっと弱いです。
その答えは最近の原宿ブログにありました。
「MAVIC OPEN PRO x DURA-ACE」
「GANWELL CARBON x DURA-ACE」
はい、「SHIMANO DURA-ACE」が全くもって良く回ります。
Philwoodがシールドベアリングなのに対して、こちらはボールベアリング。
皆さんに一度使用して欲しいと切に思います。
デザインがちょっと渋すぎるのが国産SHIMANOの弱点ではありますが、
スタートから、速度維持まで、遠慮なくグングン回ります。
自分が速くなったと勘違いしたり、ギア比が変わったと感じたり、
人によって様々な反応をしますが、不機嫌になった人とは一度も出会っていません。
36ホールだけですが、NJS認定部品なので競輪選手のお墨付きです。
手組みホイール、ハブの選択で迷ったら
まずどんな回転が欲しいのかを考えてみて下さい。
耐久性なら「Philwood」
回転性なら「DURA-ACE」
で覚えておいて下さい。
さて、いつも忘れてしまいそうになる
自分のピストに組み入れるパーツのコーナーですが
今回はワケあって「秘密」にしておきます。
ご紹介できる時がきたら、胸を張って自慢したいと思いますのでお楽しみに。
さてさて、回を追うごとに長くなっているような気がするこのシリーズ。
次回は「リムについて」お話しできればと思います。
「強すぎるアイツ」の回ですね。
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
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