あのBROTURES2大人気フレームを専門的な視点で比較してみた。
こんにちは、レンです。
それぞれを比べてみよう。
これが今日のお話。
ピストバイクは構造がシンプルな分、フレーム設計一つで全く違う乗り心地を感じさせてくれます。
なので今日はある二つのフレームを比べてみようと思います。
BROTURESでも特に人気のモデル2種をチョイスしました。
それがこちら。
TYRANT BIKES KAGEROとDOSNOVENTA DETROITを比較
この二つは形状が同じ"パシュート"設計のアルミフレームになります。
素人目で考えると同じアルミフレームだし、カーボンフォークが付いているのも同じだし、違うのはデザインぐらいじゃないの?って感じと思います。
ルックスデザインは違えど系統は同じ、なら実際その中身はどう違うのか。
違うんです。それはずっとみてきた僕たちプロだから伝えられること。
アルミの材質。
まず一番はこれ。同じアルミと言ってもその中にいろんな種類があります。
"白ってな、200色あるねん"って言っているのと同じと思っていただければわかりやすい。
KAGEROのアルミ
KAGEROに使われているアルミはA6069-T6トリプルバテッドというアルミになります。
LEADERのA6061-T6に対して比べ重量剛性比が30%高く、同じ強度ならより軽く作ることができるようになる。
これはアルミにマグネシウム(0.80%~1.20%)と、ケイ素(0.40%~0.80%)などを含んだ合金。
T6処理というのは熱処理のことで、これを行うことで格段に強度が上がります。
A6069は、添加剤であるマグネシウムとケイ素以外の不純物元素が最小限に抑えられているため、酸化被膜が形成されやすく、それはアルミ合金のなかでも優れた耐食性につながります。
DETROITのアルミ
一方DETROITに使われるアルミはA7005-T6という、通称ジェラルミンと呼ばれるアルミになります。
こちらには先ほどのマグネシウムなど意外にもいろんな元素を用いた合金になり、溶接性や耐食性にも優れた材質。
こちらも熱処理はされていて、強度はしっかりあります。
そして金属だけの優劣を決めると、実はA7005よりA6069の方が耐食性に優れております。
A6069はジェラルミン(A7075、A2024、A2017)に次ぐレベル。
ジェラルミン系の材料で怖いのは応力腐食割れです。引張応力を掛けた状態で腐食環境に置くと割れてしまいます。
強度は欲しいけど、耐食性が悪いのは怖い、、っていう場合にA6069使うことが多くなります。
ただ、これは力を加えた状態のまま悪環境に置き続けた状態で起こることですので、普段使いするピストバイクにはあまり関係のないお話。
雨などでも放置していたり、メンテナンスを怠っている状態が続いた時に早く死ぬのはA7005ってことです。
二つのアルミの違いを簡単にいうと、6069アルミを曲がると表現するのであれば、7005アルミは折れるという表現が合うかもしれません。
アルミの違いによる乗り心地。
ここからが僕たちBROTURESのスタッフが伝えられる部分。
金属の優劣の話なんて結局のところ10年乗って差が出るような部分、では実際乗り味に違いは出るのか、こっちの方がみんなは聞きたいはず。
もちろん違います。
KAGEROの乗り心地
KAGEROはA6069に変わってから乗り味がグッと柔らかくなりました。
過去のKAGEROのパリパリの乗り味からしなやかさが生まれ、ロングライドでも疲れにくくなったってのが大きな印象です。
アルミの硬さの中にもちゃんと柔らかさがあり、それが振動の吸収も行ってくれるので、過去最高に安定感が出ているのが今のKAGEROです。
DETROITの乗り心地
逆にこちらは跳ねるように走るというか。立ち漕ぎで思いっきりスピードをつけたくなる乗り味って感じ。
A7005の最大の特徴はなんと言っても軽さ。それを乗ってすぐ体感させてくれるのがDETROITです。
KAGEROに比べると短距離で最高速を気持ちよく出してくれるフレームという印象です。
設計による二つの違い。
乗り心地の違いをさらに大きく分けるのが設計。
各ブランドの設計の核となる部分やそれによる両者の違いを見ていきましょう。
今回は両方のMサイズを基準に進めていきます。
KAGEROの設計
KAGEROの設計はLEADER譲りのトラックバイクジオメトリーで、その中にオリジナルの要素を含んだものになります。
特にチェーンステーはDETROITより7mm短く、さらにフレームのカットアウトによりさらに実質10mmは中に後輪が入るようになっています。
DETROITの設計
DETROITはDOSNOVENTAのブランドネームでもあるBBの高さと、そこに加わるロードフォークオフセットと立ったシートチューブ。
トップチューブはKAGEROより20mm短く、ハンドルとの距離感はKAGEROより近く設計されています。
この両者の特筆すべきポイントはやはりフォークオフセット、BBドロップだと思う。
フォークオフセットによる操作性の違い。
まずKAGEROはLEADER時代から続く28mmオフセットのタイト設計のフロントフォークをしておりトレイル値は約68mmとなっている。
それに比べてDETROITは45mmのロードバイクで一般的なフォークオフセットを採用しています。そのトレイル値は約51mmとなります。
トレイルが長いと直進走行の安定性が良い。ハンドルから手を離しても直進するのは、トレイルが長いため。
逆にトレイルが短いと操縦性が良くなる。トレイルが短いとハンドルから手を離すとどちらに向くか分からないので、無意識であるが常に操縦する必要があると同時に操縦しやすい。
そうなると設計から見ても先に話したアルミの素材の違いが理にかなっているなと感じます。
BBドロップとその周辺設計の違いによる姿勢の違い。
KAGEROは50mmというBBドロップになり、これは結構いろんなトラックバイクの設計に使われております。
僕のCINELLI VIRORELLI STEELも同じ設計ですね。
シートチューブの角度は75°となっており、KAGEROのリーチ(BBからヘッドチューブまでの距離)は411mmとなります。
それに比べてDETROITは41mmとかなり高め。
これは2台を並べた時にペダルの位置が約1cm高くなるということです。
そしてシートチューブ角は76°とKAGEROより立っており、DETROITのリーチは408mmと、2つのモデルは3mmしか差がない。
ということはどういうことか、乗っている時の姿勢がかなり変わってくるということです。
KAGEROの方がペダルの位置が下がりシートチューブが寝ているので、設計的にはバランスの良い姿勢で乗ることができます。
これはトレイルに合わせた直進安定性を考えた設計なのかなと捉えることができます。
逆にDETROITはシートチューブも立っていてBBの位置も高い、要するに立ち漕ぎに近づいているということになります。
これもハンドリング操作を高い視点からクイックに行えるように考えた設計と捉えられるので、フォークとトレイルの数値にも合点がいきます。
まとめ。
いかがでしたでしょうか。
素材や設計から紐解く乗り方、乗り心地の違いの考察。
このように一つピストバイクに乗り出せば、それをベースにフレームの素材や設計から次に乗りたいフレームを選ぶこともできます。
KAGEROとDETROIT、どちらもぱっと見は同じようなフレームですが乗り心地や強みは全く違います。
自分の乗り方に合うのはどちらしたか?
ちなみに僕はこうやってみてもやっぱりKAGEROかな。
元々KAGEROで往復30kmを通勤していたのを考えた時にこいつを選んでよかったな改めて思いました。
また、別のフレームでこんな解説をしてほしいとかがあればDMしてください。
では。
REN
BROTURES OSAKA
Ren